石転ビ沢 春山技術合同訓練(山形県山岳協会主催)

19日15時天気図 19日17時衛星写真 20日9時天気図 20日9時衛星写真 GPSLOG うまい水で休憩
梶川ノ出合付近 梶川の渡渉 石転ビの出合 ホン石転ビ沢の出合 頑張りどころ 20日管理棟前の清水氏


日時       平成19519日〜20
参加者    山形県山岳協関係者・小国山岳会・公募計23
行き先    石転ビ雪渓(北股岳)
天 候     19日曇り時々雨  20日雪、霰〜雨
気 温     1910.9度〜13.1   207.4度〜10.0度(山形県小国町)

目 的    春山登山技術研修                                                                             
装 備     春山1泊小屋泊
登はん用具 ピッケル アイゼン ロープ(φ8.5mm×50m)
ナビ用品  GPS 地図 コンパス マップポインター
防寒具     フリース・ダウンジャケット(薄手)ウール中厚グローブ・オーバーグローブ
その他   通常装備
飲み物   水1L
食料品     19日行動食 握り飯 パン、菓子類 夕食共同
                20日朝共同、行動食 パン菓子類
嗜好品   焼酎・ツマミ類
残 量   残なし(緊急食を除く)

コースタイム              事柄              備考
519
06時30分       自宅発
07時45分       天狗平P着 道中コンビニで食料品等を購入
08時00分       集合点呼・装備品の分配・挨拶、注意事項等
08時20分       天狗平P発(420m)
08時55分       温身平(450m)
09時05分       上の堰堤
09時40分       うまい水・小休止 雪なし(590m)
09時55分       婆マクレ通過 濡れていて足場悪い
10時30分       梶川ノ出合(690m)で巻き道に入り渡渉
11時05分       梶川ノ出合上で雪渓に乗る
11時35分       石転ビの出合着    大休止・食事(870m)
12時05分       石転ビの出合発
12時55分       ホン石転ビの出合着(1,250m)
13時20分       ホン石転ビの出合発
15時15分       梅花皮小屋着(1,850m)

520
05時00分       起床
09時30分       座学後班分け、上級班は即訓練開始
11時40分       石転ビの出合(870m)
11時50分       梶川ノ出合上で大休止・昼食   雨止まない
12時05分       梶川ノ出合上発
13時00分       うまい水着(590m)
13時30分       上の堰堤(500m)
13時50分       温身平(450m)
14時10分       天狗平駐車場着    貸与品の返却・解散
14時25分       天狗平駐車場発
16時00分       自宅着


移動データ
標高       スタート場所 天狗平           420
到達地点  梅花皮小屋    1,850
標高差    1,430

TP距離  総移動距離(GPSデータ)16.5km
時間       移動時間(GPSデータ)       5:28
移動平均速              3.0km/h          

概要
恒例の春山登山技術合同訓練が519日〜20日石転ビ沢で開催された。(主催 山形県山岳連盟(指導員会・遭難対策委員会) 今年で3回目の参加。私にとっては欠かせない春の行事。この講習会を通じて知り合った小国山岳会の方々、その他一般参加の常連さんとの再会。そして、セルフレスキュー&チームレスキューの考え方をリセットする大事な機会である。
また、この度は小国山岳会の高貝氏が2年ぶりに講師と参加とのこと、高所、氷河での実践技術を教授頂けるチャンスでした。

519
朝目覚めると雨。インターネットで気象関係のデータを確認する。予想図では高層850hpa(1500m相当)で6℃、500hpa(5300m相当)で−18℃の寒気が流入する予報図だった。要らないと思っていたが、ウールの中厚グローブ1双、オーバーグローブ1双をザックに入れた。家を出て、コンビニで行動食を購入して雨の国道を進む。昨年とは異なり、既に天狗平まで入ることができた。集合場所で点呼、その他注意事項等のミーティングを経て、出発。

温身平の新緑は雨の中で輝いていた。どんな山行でも身体を濡らす雨の出発は気が滅入るものだが、この新緑は萎える気持ちに落ち着いた心の平穏を感じさせてくれた。
堰堤の先で、5年前の事故現場に向かい独り手をあわせる。この先、ずっとこの前を通る度に手を合わせ続けることだろう。
悲しい場所は余りに美しい場所だ。

うまい水で休憩。雨もあがってきた。全員問題なく元気である。暑がりのボクは半袖のTシャツのみで登る。

GWに通過した面影は既に無い。地竹原も雪は見えない。先行したスキーヤーに追いつく。スキーを担いでの高巻きは厳しいだろう。
夏道通しに進み、梶川の出合いは既に崩壊中。渡れる状況にはない。巻き道を行く。以前の登山道は既にガケ崩れのため跡形もない。これは、本流の流れを変えない限り、次々と斜面崩壊が続くだろう。何度、巻道を構築しても崩れ続けるともう。

梶川を渡渉し出合いの少し先で雪に乗る。この高巻きでかなりの時間的ロスだ。この先は目立った窪みはなくほぼ順調に石転ビの出合いに到着。全く、プラブーツでの高巻きはオシオキみたいだ。

ところで、今回何故、プラブーを選択したか・・・・・
@雨降りの泥道に新しい冬革靴少し痛ましい。
A古いAKUは良いんだけれど、後始末が面倒。
Bシェルを洗うだけのプラブーは簡単。
で、後始末の簡便さでプラブー
しかし、行程の半分近くを占める、雪の無いところをプラブーで歩くのはしんどい。まして、高巻きは拷問そのもの・・・・
ようやく、梶川に出る。水量は問題なし。渡渉して少し上に行ってから、雪に乗る。
しかし、雪の状態は悪く不安定なところ、薄くなっているところがある。順序良くHZUさんの選定したルートを全員でトレースしていく。

石転ビの出合いで合羽の上着を着て、食事を摂りながら出合い付近から上部を観察する。出合い付近は2週間前より大分、大岩の露出が多くなってきた。上部を眺めるが、顕著なデブリ落石跡はない。どちらかと言えば平穏な感じがする。
後続パーティーが、HZUさん、MDEさんに門内沢を詰めたいのだが・・・と相談。
大丈夫だろうけれど、分岐で間違えると、ギルダ原方向に出ると上部が厳しい。また次の分岐で右に寄ると扇ノ地神方向に振れる。
稜線の視界が効かないので素直に石転ビを上がる方が無難じゃないかな。とアドバイスしていた。

ユックリと歩く。ホン石転ビの出合対岸の休憩ポイントを目指すが、見えていても中々近づかない。これが石転ビ沢のスケールを感じさせる。
ホン石転ビ沢の出合い対岸の休憩ポイントで休憩。足が重そうな方の共同装備品を引き受けた。ここでボクはストックを片付けてピッケルを出しアイゼンを着用する。雪は柔らかいのでアイゼンの効きは良くないが、アイゼン登行に不慣れな方の訓練も兼ねているので、この位が丁度よいと思う。
後続のパーティーが追いついてきた。どうやら門内沢へ行かずに石転ビにルートを変えた様だ。

北股沢の休憩ポイントから上部は視界がない。登り始め暫く進むと、斜面がやけに急になる。LFDさんがもう少し右方向だ〜。と叫ぶ。少し東に寄っていた様だ。やや西へ斜上していく。
HZUさんの指示でZWWさん、MDEさん、LFDさんらと何人かで列から横にずれてフォールラインに離れ滑落に備えてサポート体制を取り登る。
後続グループが間に入り俄か混成パーティーの様相。
アラレがぱらついてきた。
あと少しで傾斜が緩む頃、後続パーティーの1名が脚に違和感を訴え列から離れ我々パーティーが先行する。
傾斜が緩んでもナカナカ小屋に到着しない。視界のない時は特に不安感が出るところだ。(勿論、引率者が引率者だけに今回はそんな事はないのだが)いきなり、ぼうっと小屋がぼんやり見える。ようやく到着。

2階へザックを持ち上がりようやく人心地がついた。乾杯までの間にロープワーク研修。
シェフLFDさんのちゃんこ鍋、ヤキそばがテキパキと準備される。乾杯に引き続いて自己紹介。
外の様子を見ると雪になっていた。寒いワケだ。
自己紹介の合間に豪華な食事に舌鼓を打つ。その後、階下から後続隊の来客。9時閉会で就寝。
・・・・呑み足りない手合いは管理棟で2次会。
小用の為、本棟に向かうと積もっている。おいおい、5月20日だぞい。GWじゃあるまいし・・・・
高貝さんから、上級班は明日、北股沢の少し上のルンゼを詰める研修コースを登攀する。と聞いて心が躍る。
その後も、高貝さんからアルパインクライミングの心得、考え方などをお聞きする。
明日の楽しみの為に管理棟を先に抜け出して就寝。
この夜、風が強く時々目を覚ました。


520
風は一晩中吹き続けていた。風の音で時々目を覚ましてしまい、なかなか熟睡できなかった。起床時間は6時だけれど、朝5時にお茶を飲んで目を覚ます。その後朝食を摂る。
昨日の天気予報では
日曜日の方が天候が良さそうなので、食後、遭難者の担ぎ方、ザック搬送の方法などを座学で学ぶ。

このあと、クラス分けを行い、初級班はHZUさん、上級班はMDEさんの指導で訓練が開始された。
ウールの中厚グローブにオーバーグローブで指先ヌクヌク。備えあれば憂いはありませんでした。
しかし、残念ながら、天候の回復が望めず、また昨夜来の降雪で雪崩の危険がありルンゼの登攀訓練は中止。
上級班は北股沢の出合いの少し上まで下降した。
所々に新しいデブリがある。今回の雪でのデブリだ。雪は20cm〜深いところでは膝まで潜る。これが登りなら大変だ。

ザックを降ろして空身で谷に向いて目を瞑れ!と指示。案の上、突き倒される。この訓練の眼目は、コンテの場合、突然パートナーが滑落するので、滑落をするのを確認してからの訓練は意味がないという。そういう意味で、イキナリ飛ばされた時どう対応するか?この事を伝えたかったのだ。
その後、コンテで下降訓練。ロープの間隔が長すぎると注意を受ける。せいぜい5m位だそうだ。それ以上長いと滑落距離が長くなり止まらないのだそうだ。下降しながら、時々打ち合わせナシでパートナーが谷に向かい飛び込み滑落する。
北股沢の出合い付近でスタカットの訓練。各ロープでスタカットの練習。上から初級班が降りてきた。
ここで上級班もキリの良いところで訓練を切り上げてロープ等を片付けて初級班を追う。

ホン石転ビ沢の出合い付近まで降りてくると雪は雨に変わった。アイゼンを外し、トコトコ降りる。
梶川ノ出合の少し上で食事を摂り渡渉する。雨の割りに思ったほど増水していなかった。雨でぬかるんだ巻き道を進む。プラブーでの泥濘は悲しくなる。
婆マクレを通過して、うまい水で休憩。
後は、天狗平を目指して黙々と進む。

雨の温身平のブナの緑を愛でながら天狗平をめざし湯沢でスパッツを洗い駐車で講師の総評を解散の挨拶として解散した。

ルンゼ登攀が中止となり残念至極であったが、今年は、例年にない小雪でルートファイディングの重要性、また遅い雪で春山の装備品の留意点など考える所が多かった。・・・・高層天気予想図では500hpaで−18度、850hpaで+6度だったが、要らないだろうと思いつつ、もしかして?と思いウールの中厚グローブ、オーバーグローブを1双づつ持参した。濡れはしたが助かった。


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